Twitterは、クリプトとWeb3コミュニティにとって町の広場のような存在です。多くの人が信じている考え方の一つに、アプリの構築よりも分散化(decentralization)の理念を優先すべきだというものがあります。しかし私たちは、アプリの普及が進むことで自然と分散化が進むと信じています。ユーザーがいなければ、私たちは分散化について話すだけの場しか残らず、実際に分散化されたプロダクトを使う人がいなくなってしまいます。
どれくらいの期間が「初期」とされるのか
クリプトTwitterでよく見られる反応の一つに、「プロダクトがまだ広まっていない」という疑問に対して「私たちはまだ初期段階です」と答えるものがあります。このとき、インターネットの初期とクリプトの現在を比較したグラフがよく提示されます。この反応は非常に一般的で、投資会社a16zもそのクリプトに関するレポートで5つの重要なポイントの一つとして取り上げました。
Web3の使命と可能性に対して慎重に楽観的な立場から、私は追加の質問があります。どれくらいの期間が「初期」とされるのでしょうか?どのようにしてそれが初期段階ではなくなったと判断できるのでしょうか?「初期」から次の段階へ移行するとは具体的にどういうことなのでしょうか?初期段階から次の段階へは、どのような変化が必要なのでしょうか?
クリプトおよびWeb3の普及は、トークン価格の動向に深く依存しています。イーサリアム系のウォレットであるMetamaskは、合計3000万のユニークウォレット(※)を報告していますが、多く見積もったとしても実際のユーザーは数百万人程度でしょう。
(※)ユニークウォレットは、暗号通貨の取引を行うための一意のデジタルウォレットです。各ウォレットは特定の個人やエンティティに対応しており、公開鍵と秘密鍵を使って取引を行います。このウォレットは、他のウォレットと重複せず、ブロックチェーン上で一つしか存在しないため「ユニーク」と呼ばれます。
同様に、Solanaは今回の強気市場のピーク時で350万のユーザー数を報告しました。これらは、「Web2」プラットフォームにアクセスしている人々の数と比較して、端数に過ぎず誤差の範囲でしょう。取引所はクリプトにおいて重要な機能を果たしますが、トークンとJPEGに対する投機だけでは普及につながらないでしょう。
3つに分かれる今日のクリプト系のアプリ
取引所とトレーディングというカテゴリー以外では、今日のクリプト系のアプリは3つのカテゴリーに分かれます。
1:ユーザーのいないdApps(分散型アプリ)
dApp radarによると、Ethereum、Polygon、Avalanche、Solanaなどの主要なブロックチェーン上で動いているアプリは、過去30日間で合計50万未満のユニークウォレット(個別のユーザー)しか持っていません。これらのチェーンは分散型の理念に基づいていますが、普及の面ではまだ影響力が十分ではないことがわかります。
2:「メタバース」に参入する既存企業
既存の大企業がメタバースに参入することで、多くのユーザーを引き込むことが期待されますが、具体的にメタバースで何をするのかがはっきりしない場合が多いです。私たちはその動きに期待するべきですが、実際には単なる宣伝(PR)に終わることも少なくありません。
3:新たな傾向:分散化の要素を持つ中央集権的なフロントエンド
新しいトレンドとして、分散化の要素を持ちながらも中央集権的なフロントエンド(ユーザーが直接触れる部分)を使うアプリが登場しています。例えば、StepNというアプリは、中央集権的なモバイルアプリをフロントエンドとして使用し、ブロックチェーン上の資産と組み合わせた「move2earn」ゲームを提供しています。このゲームは、トークンの価格が急落したにもかかわらず、3月と比べて8月にはほぼ2倍のユーザーを獲得しました。
何百万人も、あるいは何十億人ものユーザーに使ってもらうアプリを構築しようとするクリプトプロジェクトの創業者やチームにとって貴重な教訓があります。それは、ユーザーに受け入れてもらうにはどうすればよいか、というものです。
本稿では、最小限に必要な分散化で最大限プロダクトに焦点を当てるWeb3プロジェクトが成功すると主張します。特に以下のような方々にとって、価値がある記事になることを願います。
- プロダクト戦略やエンジニアリングデザインに関する重要な決定を下す創業者やリーダーチーム
- 開発者、クリエーター、オペレーションチーム、デザイナー、ビジネス開発など、新たなクリプトプロジェクト構築に取り組んでいる貢献者
- クリプト投資家
分散化は普及を促進しない
VCのDragonflyのManaging PartnerであるHaseebは、2020年3月、「分散化がそれほど重要でないかもしれない理由」についてのエッセイを書きました。全文を読むことを強くお勧めしますが、主なポイントは以下の通りです。
ユーザーは分散化を気にしないため、分散化が普及を促進することはありません。その理由は、分散化がグローバルな概念であり、直接的に観察したり感じたりすることが難しいからです。分散化そのものが私たちが使用するプロダクトの質を向上させるわけではなく、分散化がないことがプロダクト体験を悪化させるわけでもありません。
(出典:Haseebのエッセイ)
プロダクトを普及させるためには、まず身近で直接的な価値を提供する必要があります。ユーザーが直接プロダクトを体験し、彼らの生活をより良くするものと認識することです。この目的のために、アプリ(またはdApps)の分散化を推し進めることは役に立たないばかりか、おそらく有害であると私たちは考えています。代わりに、価値の最大化に焦点を当てつつ、最低限分散化の重要原則を確保することが普及への道であると主張します。
数百万人から数十億人のユーザーに対応できる暗号資産(クリプト)アプリを構築するためのガイドラインを説明する前に、私たちはクリプトの2つの重要な特性が保たれるべきだと考えています。それらは、組成性(Composability)と検閲耐性(Censorship resistance)です。
顧客に価値を提供しながら、これらの特性を維持するアプリを開発することが重要であり、可能であり、必要であると信じています。分散化しやすくても、ほとんど利用されないアプリを作ることが目的ではないことに注意しましょう。
※Superteamのブログ ”Stop Building for Crypto Twitter”(2022年10月9日公開)を日本語に翻訳・加筆編集したモノです。
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