SuperteamのAkshayとKashは、別の記事で、DAOにおいてフォーキングが投票よりも優れている理由について語りました。実際には、ガバナンストークンは未来を見据えた革新的なツールとして作られたのではなく、米国の証券規制を回避する手段として考案されました。
ガバナンストークンの本当の存在理由
ガバナンストークンとは、ブロックチェーンプロジェクトや分散型アプリケーション(DApps)の運営に参加する権利を持つトークンです。これらのトークンを所有することで、ユーザーはプロジェクトの方針や重要な決定に投票する権利を得ることができます。これにより、コミュニティ全体でプロジェクトの方向性を決める「分散型ガバナンス」を実現しています。
表向きは、ガバナンストークンはプロジェクトの透明性と公平性を高めるためのものとされていますが、実際には別の目的がありました。米国の証券規制は、投資家を保護するために非常に厳しいものとなっています。トークンを証券として扱う場合、これらの規制に従わなければならず、プロジェクトにとっては大きな負担となります。
そこで、ガバナンストークンはこれらの規制を迂回する手段として利用されました。ガバナンストークンは「投資目的」ではなく「ガバナンス目的」として発行されるため、証券規制の対象外となりやすいのです。これは、多くのブロックチェーンプロジェクトが資金調達を行う上で、法的な障壁を避けるための戦略として使われました。
ガバナンストークンは一見、未来志向でコミュニティ主導のプロジェクト運営を目指したもののように見えますが、実際には米国の厳しい証券規制を回避するための手段として発明されたのです。この現実を理解することで、ブロックチェーンプロジェクトやトークンの本質をより深く知ることができます。
ガバナンスとその過大評価
私たちは、人々が参加するネットワークの所有権を持つことが重要だと考えています。これは、ネットワークやプロジェクトが一部の特権階級ではなく、すべての参加者によって管理されるべきだという考え方です。しかし、現在のところ、投票によるガバナンス(運営や管理)の役割が過大評価されていると感じています。
投票によるガバナンスとは、プロジェクトの方針や重要な決定を、トークンを持っている人たちが投票で決める仕組みです。これは一見、非常に民主的で公平な方法に思えます。しかし、実際には投票だけでは効果的に運営するのが難しいことが多いのです。たとえば、投票が少数の大口保有者に左右されやすかったり、複雑な問題に対する決定がスムーズに進まなかったりすることがあります。
初期段階では、中央集権的なコアチーム、つまり中心となる少数のチームがプロジェクトを運営する方が良いことが広く認められています。これにはいくつかの理由があります。まず、少数のチームが迅速に意思決定を行うことができ、プロジェクトの進行がスムーズになります。また、経験豊富なメンバーがリーダーシップを発揮することで、プロジェクトの方向性をしっかりと定めることができます。
a16zの段階的な分散化のプレイブック
著名なベンチャーキャピタル企業であるa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)は、この考え方を支持しており、段階的な分散化(Progressive Decentralization)の方法を提案しています。彼らのプレイブック(ガイドライン)によれば、まずは中央集権的なコアチームがプロジェクトを立ち上げ、その後、徐々にガバナンスをコミュニティに移行することが推奨されています。これにより、プロジェクトが安定した後に、より民主的な運営が可能になります。
プロトコル(基本的なルールや仕組み)は中立である必要があります。つまり、誰にでも公平に適用され、特定の個人やグループに有利に働かないようにするべきです。しかし、プロトコル自体の運営や管理、つまりガバナンスは避けられません。プロトコルを適切に運用し、問題が発生したときに迅速に対応するためには、誰かが管理しなければならないのです。
アプリケーション(アプリ)の運営についても、中央集権的なコアチームによって行われる方が良い場合があります。これは、アプリがユーザーに対して安定したサービスを提供し、迅速に改良や修正を行うためです。中央集権的なコアチームが運営を担当することで、アプリの品質とユーザー体験を高めることができます。
アプリ開発におけるトークンとNFTの活用法
アプリの開発では、コミュニティ(ユーザーや支援者)がどう関与するかを見つけることができます。開発者は、プロダクトやサービスに対して料金を請求しつつ、外部の関与を最小限に抑えることを選ぶことができます。また、アプリはトークンやNFTを発行してコミュニティから資金を集めることができます。コアチームは、何を投票にかけるかを決め、コミュニティの意見を聞くことができます。各チームは、自分たちにとって最適な運営モデルを選ぶことができます。
よく設計されたコンセンサス(合意形成)主導のガバナンスは、既に機能しているものを維持するための手段ですが、新しいものを生み出すことはほとんどありません。新しいものを作り出すには、真実を追求し、リスクを取り、努力が必要です。
※Superteamのブログ ”Stop Building for Crypto Twitter”(2022年10月9日公開)を日本語に翻訳・編集したモノです。
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