Solanaは会社ではなく、都市のような存在になることを目指しています。ブロックチェーンを都市や国に例えることは以前からありますが、この記事ではそれをさらに進めて、ブロックチェーンが世界的に成長する意味について話します。
イマージェント・システム(Emergent Systems)
まず、イマージェント・システムという概念を理解することが重要です。これを理解すると、あなたの世界観は根本的に変わります。物事がどのように成し遂げられるか、新しい産業がどのように作られるか、未来永劫不滅に見える機関がなぜ失敗するか……などを理解します。
私たちのほとんどは子供の頃、決定論的なシステムで過ごします。具体的には、学校では毎年、次の学年に進みます。1年の終わりの「結果」は、1年間で受けたすべての試験の総合的な評価です。それらは、個々の部分の合計です。そして、物事がどのように進められるかを管理するいくつかのエンティティ(教育委員会、学校委員会、教師)があります。
実は、決定論的なシステムは現実のシステムと正反対です。
物事の結果は非線形であり、利益は時間と共に複合され、過去数年を通じて私たち全員が学んだように、特定の誰かが世界を動かしているわけではありません。
ウィキペディアからイマージェンス(Emergence)の定義をもってきましょう。要約すると、イマージェンスとは「魔法」です。
「システムがイマージェンスの特性を持つとは、『全体』がその部分に還元できない特性を持っている場合です。何か新しいものが一連のピアツーピアの相互作用を通じて作られます。そして、それが十分な規模に達すると、全体がまとまり、時間を超えて存在するのを『感じる』ことができます。システムをシミュレーションで作ったり、一連のルールを通じてその振る舞いを予測したりすることはできません。それを観察することしかできません。これらのシステムはフィードバックループを使って個々の要素を洗練または除去します」
少し難しいので言い換えると、システムがイマージェンスの特性を持つとは、全体がその部分を単純に足し合わせたものではないということです。新しい何かが、たくさんの人々の相互作用を通じて作られ、それが大きくなると、全体としてまとまった存在になるのを感じることができます。このようなシステムは、コンピュータで再現したり、決まったルールでその動きを予測したりすることはできません。観察するしかありません。また、フィードバックループを使って、個々の要素を改善したり取り除いたりします。
イマージェント・システムのいくつかの例
それでは、イマージェント・システムの例をいくつか紹介しましょう。
- 生命
生命を個別の機能の単純な合計に分解することはできません。進化には何か魔法のようなものがあり、それを感じたり観察したりすることはできますが、シミュレートしたり予測したりすることはできません。
- 民主主義
民主主義の繁栄には何が必要でしょうか?強固な司法機関、自由な報道、公正な選挙、アクティブな市民、有能な官僚、正直な政治家などです。
では、これらのいくつ必要なのか?正確にはわかりません。これまでに成功した民主主義の中には、それぞれの要素が程度の異なる形で含まれています。大事なのは、それらがどのように相互に作用して結果を生み出すかです。
- マーケット
十分に大きなマーケットでは、将来何が起こるかを予測することはできません。猿が選んだ株式のポートフォリオやインデックスファンドが、ほとんどのアクティブ運用ファンドを上回る理由です。
- アプリエコシステム
AppleとGoogleがアプリのストアを立ち上げたとき、どのアプリが多くのユーザーを獲得し収益を生み出すかを予測することはできませんでした。彼らは単にユーザーのためのプラットフォームとビルダーのためのツールを作りました。ほとんどの場合で、どのアプリが成功するのかを見極めた後で、反応を決めることができます(例えば、競合するサービスをコピーするなど)。
なぜ会社ではないのか?
ブロックチェーンを会社としてではなく、都市として捉えることは非常に重要です。とくに、Solanaは会社ではなく、都市のような存在になることを目指しています。
その理由は、都市がイマージェント・システムではないからです。会社は予測可能であるように設計されており、ガレージやスタートアップから生まれた革新を守るために最適化されています。企業は四半期ごとの財務報告と将来の収益予想を提供するように最適化されています。
メタやNetflixの最近の株価を見れば、将来が予測できないと企業がどれだけ大きな影響を受けるかがわかります。これは、始まったばかりの事業が、成熟した企業よりも不安定である理由です。そのため、成熟した企業は「イノベーション」(新しいことを試す部門)と「ビジネス・アズ・ユージュアル」(日常業務を行う部門)を分けるのです。
分ける理由は、新しいことを試す部門は失敗することも多く、リスクが高いからです。日常業務の部門とは別にしておくことで、会社全体に与えるリスクを減らしつつ、イノベーションを進めることができるからです。また、これは「CEO主導」の企業が、例えばデュアルクラスの株式を作るなど、さまざまな工夫をして変化に対応しようとする理由でもあります。
この考え方は間違ってはいません。しかし、これはブロックチェーンを拡大する方法ではないことに注意をしたいです。
企業が成熟するにつれて、どの部分が利益を生み出すかを予測できるようになります。企業は、安定した日常業務とリスクのある新しい取り組みを分けて管理することで、成長を続けられます。しかし、ブロックチェーンの場合は違います。
ブロックチェーンの基礎となる技術が成熟しても、その上でどのアプリケーションが成功するか、どれが一番価値を生み出すかを予測するのは非常に難しいのです。例えば、Solanaブロックチェーンは技術的には大きく進化しましたが、その上で作られるアプリケーションのどれが一番成功するかはわかりません。ブロックチェーンの成長は、たくさんのアプリケーションが自由に試行錯誤し、その中から自然に成功するものが現れるというイマージェント・システムに近いものです。
つまり、ブロックチェーンの成長には企業のような管理方法は適しておらず、自由に新しいアイデアを試し、自然に成長する環境が必要なのです。
※Superteamのブログ ”On Growing Solana City”(2022年12月13日公開)を日本語に翻訳・加筆編集したモノです。
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